最高裁判所第一小法廷 昭和25年(れ)727号 判決 1950年7月20日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人松尾菊太郎、同堤牧太上告趣意第一点について。
所論銃砲等所持禁止令の許可申請期間は、当初昭和二一年六月一五日から二箇月以内であったが、同年八月一四日勅令第三八四号で「二箇月」を「四箇月」に改められた。そして、所論の米第八軍司令部から内務省警保局長宛の昭和二三年二月二四日附の覚書は、これに基いて前記禁止令改正の措置がとられたものではなく、単に捜査機関に対する行政的命令たる性質を有するものであって、同覚書にいわゆる「懲罰手段に出てはならない」との趣旨は、所定の事情のある場合には訴追に関する手続の実行を見合わすべしとの意味のものである。本件刀劍不法所持の発覚は、所論のごとく窃盗事件の家宅捜索中に被告人方から発見されたものであることは記録上明らかである。そして、被告人は前記禁止令の許可申請期間内に許可の申請をしなかったものであり、右覚書所定の手続をしなかったものであるから、たとえ右覚書による延長された許可申請期間内であったにかかわらずそれがために不法所持として訴追されたものであり、また訴追がなされた以上原審が有罪の判決をしたことは適法である(判例集第二巻第四号第三五〇頁参照)。論旨は採るを得ない。
同第二点について。
撤回されたので説明を略する。
同第三点について。
原判決は、所論のように明らかに「粳」とは判示していないが、その統制額を七〇一円六〇銭(すなわち粳の統制額)と判示しているのみならず、証拠説明によれば明らかに飯米用の売買であるから、原判決が粳玄米と認定判示した趣旨であることは十分窺知することができる。論旨は理由がない。
同第四点について。
原判決の挙げている証拠で転売して利益を得る目的であったことは認め得られる。所論は、ただ原審の自由裁量に属する証拠の取捨判断を非難するに過ぎない。また所論検事聴取書中の供述記載は、証人の単なる想像ではなく、供述者の実験した事実による推測事項(旧刑訴二〇六条)であることは、原判決の引用部分に徴して明白である。原判決には所論の違法はない。
第五点について。
すでに第一点において説いたごとく本件の訴追にも別段違法と認むべきかどはなく、また一件記録を調べてもその勾留が不当だと認むべき点は存在しない。それ故、原判決に所論の違法を認めることはできぬ。
よって旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。
この判決は裁判官全員の一致した意見である。
(裁判長裁判官 真野 毅 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 岩松三郎)